研究概要 |
放線菌500株、糸状菌100株の培養液ブタノール抽出物を一次スクリーニングに供した。その結果、放線菌3株と糸状菌1株の培養抽出エキスに大腸癌由来DLD-1細胞の足場非依存性増殖に対する阻害活性が認められた。このうち、活性の再現性が得られた放線菌と糸状菌1株ずつについて、活性成分の単離・同定を試みた。 1)糸状菌Aspergillus aurantiogriseum TP-F0213が生産する活性成分の同定 TP-F0213株を液体培養し、酢酸エチル抽出により、粗活性抽出物を得た。これをシリカゲルカラム精製し、活性画分を再結晶することにより、活性成分(anicequolと命名)を得た。NMR及びX線結晶解析により、本物質の構造を(3β,5α,7β,11β,16β,24S)-16-acetoxy-3,7,11-trihydroxyergost-22-en-6-oneと決定した。本物質は新規化合物であった。本物質は、大腸癌由来DLD-1細胞の足場非依存性増殖を1.2μMで阻害し、足場依存性増殖は40μMで阻害したことから、足場非依存性増殖の選択的阻害剤であると言える。 2)放線菌TT2149株が生産する活性成分の同定 TT2149株を10L液体培養し、酢酸エチル抽出により、粗活性抽出物を得た。これをシリカゲルカラム、分取HPLCにより精製し、活性成分A (0.3mg)、B (0.6mg)、C (0.3mg)を得た。これらはいずれも同一のUVスペクトルを有し、その波形から核酸系物質であると予測された。これらのうちAとBは混合物であったため、Cについて構造解析を進めているが、量が少ないために構造決定には至っていない。
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