研究概要 |
本年度は、(1)放線菌TT2149株が生産する活性物質の単離・構造決定と生物活性評価、(2)糸状菌由来阻害物質anicequolの構造活性相関について検討を行い、以下の結果を得た。 (1)前年度までにTT2149の活性成分3種類を単離したが、構造解析に十分な量が得られなかった。本年度は生産培養条件の検討と大量培養を行い、約10Lの培養液から単一な成分TT2149Cを3.3mg得ることができた。これについて構造解析を行った結果、糖1位と6位の立体化学は未決定であるが、spicamycinの脂肪酸側鎖9位にcis型二重結合が存在する新規化合物であることを明らかにした。次いで、類縁化合物のspicamycin、septacidinと共に、TT2149Cの足場非依存増殖阻害活性を比較検討した。3化合物の間で、IC_<50>値に大きな差はなく、10nM程度でSKOV-3の足場非依存性増殖を阻害し、基質接着下の細胞は30〜40nMで阻害された。また、(財)癌化学療法センターの癌パネル試験では、種々の癌細胞の増殖をIC_<50>値1〜10nMで阻害し、そのフィンガープリントパターンは、KRN5500 (spicamycin合成誘導体)に高い相関を示した。TT2149Cの作用機序については興味が持たれるが、類縁化合物のKRN5500が米国で抗癌剤の臨床試験中(Phasc I)であることから、TT2149Cをリードとした抗癌剤開発は困難と考えられる。 (2)Anicequol (3β,5α,7β,11β,16β-16-acetoxy-3,7,11-trihydroxyergost-22-en-6-one)を化学変換することにより誘導体合成を行い、構造活性相関を調べた。その結果、anicequolの側鎖二重結合を還元した化合物と3位水酸基をアセチル化した化合物がanicequolよりもDLD-1の足場非依存性増殖を阻害する有効濃度が低く、かつ基質接着下の細胞に対する毒性が低いことがわかった。今後は、これらの誘導体を大量に調製し、マウスでのin vivo試験を実施する予定である。
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