研究概要 |
1)リパーゼなど用いる加水分解酵素を用いる反応-速度論的光学分割によるヘテロ環状アミノ酸類の光学活性体合成:ラセミ体プロリンの環内窒素原子をカルバミルアミノ基、Boc基、Cbz基で保護したエステル類に対し、加水分解酵素を用いる光学分割を試みた。その結果、C.antarcticaリパーゼがBoc体やCbz体に対し、良好な鏡像選択的な加水分解能を示した(S体優先、E>100)。インドリン-2-カルボン酸エステル誘導体に対しても、酵素反応温度を60℃以上に上げ、基質を融解するという方法によって実用的な光学分割が達成された。 2)酵母還元と化学変換を相乗的に活用する利用する光学活性物質の合成および天然物合成への応用:隣接四級炭素の立体化学を認識して選択的に還元反応を進行させる特異的な能力を有する、酵母の一種Torulaspora delbrueckiiを用いる還元反応を検討、環状ジケトン構造をもつトリケトン類では立体選択的還元反応が進行、光学的に純粋なヘミアセタール閉環体を得ることができた。ラジカルのβ-開裂を経由し、α-アルケニルシクロアルカノン類の光学活性体合成を達成した。また、この酵母から、長期保存も可能な乾燥菌体の調製に成功した。 3)酵素による非対称化と電気化学的手法を組み合わせる生物活性物質合成:対称構造を持つジエステルを酵素加水分解による非対称化によって光学活性体とした。陽極酸化により重要中間体を得、ルイス酸による転位反応によりクロマン型化合物を経由し(8S,10S)-ヘリアヌオールEの全合成を達成した。
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