研究概要 |
研究代表者・長岡は、牛乳の乳清タンパク質のβ-ラクトグロブリンのトリプシン加水分解物が血清コレステロール低下作用を発現することを見出し、小腸上皮細胞の機能を発現するヒト結腸ガン由来株化細胞Caco-2におけるコレステロール吸収実験から吸収抑制作用を有するペプチドを4種類同定し、報告した。そのうちのIIAEKは、in vivoでもコレステロール代謝改善作用を発揮することが明らかにされでいる(Biochem.Biophys.Res.Commun., 281, 11-17 (2001))。しかし、IIAEKなどのペプチドがどのような機構で、コレステロール代謝改善作用を発揮するかは、充分には解明されていない。そこで今回は、IIAEKのコレステロール代謝改善作用について、特に分子・遺伝子レベルで解明することをHepG2による培養実験を用いて試みた。 検討の結果、IIAEKは、胆汁酸生合成の律速酵素であるコレステロール7α-水酸化酵素(CYP7A1)のmRNAを上昇させ、コレステロール合成の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素mRNAやLDL受容体mRNAは変化させなかった。CYP7A1のプロモーターにルシフェラーゼ(Luc)遺伝子を連結したLucプラスミドを構築し、ルシフェラーゼ分析を行った結果では、IIAEKがCYP7A1の転写の活性化によりCYP7A1のmRNAを上昇させることを発見した。さらに、IIAEKは、放射性コレステロールから放射性胆汁酸の生成を促進させた。HepG2細胞において、IIAEKは、胆汁酸生成の律速酵素であるCYP7A1の転写活性化により、コレステロールの分解を促進する可能性が示唆された。以上の成果は極めて新規性の高いものであり、高く評価できる。
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