本研究課題に関する研究で、平成15年度に得られた主な知見は以下の通りである。 (1)LPS/GalN肝炎発症に及ぼすタンパク質の効果:ラットに実験食を10日間自由摂取させたのち、リポポリサッカライド(LPS)(10μg/kg)+D-ガラクトサミン(GalN)(200mg/kg)を腹腔内注射して急性肝炎を惹起させ、8時間後に血液と肝臓を採取した。肝炎の指標として血漿中のALTとAST活性を測定した。25%カゼイン食(25C)、10%カゼイン食(10C)、および10%カゼイン食+0.32%システイン添加食(10C0.3Cys)の3種類の実験食をラットに与え、肝炎発症に及ぼす影響を調べたところ、25Cを投与したラットに比べて10C投与ラットでは肝炎の発症が強く抑制された。10C0.3Cys投与ラットではさらに強い肝炎抑制が見られ、栄養価を高めた低タンパク質食の投与はLPS/GalN肝炎の発症を強く抑制することを見出した。10C0.3Cysの効果はTNF-αの産生抑制ではなく、TNF-αのアポトーシス誘導作用の抑制作用に起因することが示された。また、10C0.3CysによるNOの産生抑制も肝炎抑制効果に寄与していると考えられた。 (2)LPS/GalN肝炎発症に及ぼすアミノ酸の効果:20種類のアミノ酸について肝炎抑制効果を検討したところ、(i)Gly、(ii)分岐鎖アミノ酸のうちValとIle、(iii)塩基性アミノ酸のうちLysとHisの計5種類のアミノ酸が強い肝炎抑制効果を示すことを見出した。作用機構を検討したところ、GlyはTNF-αの産生・分泌を抑制することにより、一方、分岐鎖アミノ酸や塩基性アミノ酸はNOの産生を抑制することにより肝炎発症を抑制することを示す結果が得られた。 以上のように、肝炎の発症は食餌タンパク質やアミノ酸などを適切に用いることにより制御できることをLPS/GalN肝炎モデルを用いて明確に示すことに成功した。
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