研究概要 |
ラットを実験動物として用い、LPS/GalN誘導性肝炎の発症に及ぼす食餌タンパク質およびアミノ酸の影響を詳しく検討するとともに作用機構を明らかにする目的で一連の実験を行った。 (1)ラットに牛乳カゼイン、全卵タンパク質、大豆タンパク質、小麦グルテンを含む食餌を与えてLPS/GalN肝炎に及ぼす影響を検討したところ、大豆タンパク質は肝炎発症を最も強く抑制した。大豆タンパク質の効果には混在する不純物の他にアミノ酸組成が関与することが示された。 (2)低カゼイン食(10%)は標準カゼイン食(25%)あるいは高カゼイン食(50%)に比べてLPS/GalN肝炎の発症を抑制したが、低カゼイン食への少量のCys添加はさらに肝炎を抑制し、栄養価の高い低タンパク質食はLPS/GalN肝炎抑制に有効であると考えられた。 (3)食餌への各種アミノ酸の添加効果を検討したところ、Gly, Val, Ile, Lys, Hisの5種類アミノ酸はLPS/GalN肝炎の発症を強く抑制することが示された。 (4)タンパク質およびアミノ酸の効果の機構を検討したところ、多くの場合、LPS刺激によるTNF-αの産生亢進の抑制よりもNO(一酸化窒素)の産生亢進の抑制の方がより深く関わっていることを示す結果が得られた。 (5)本研究結果は、肝機能が摂取タンパク質あるいはアミノ酸の影響を強く受けることを示しており、それは肝炎の発症に対する抵抗性とも関連している。肝炎抑制に関して、食餌タンパク質やアミノ酸という重要な食品あるいは栄養成分が大きな役割を果たしうることが明確にされた。
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