研究概要 |
1.TGF-βが脳に対して作用することの証明 i.脳波の測定 脳波は脳神経細胞の電気的活動の総和を脳皮質表面で記録したもので、ある生理的状態に対応して特定の波形の脳波が記録される事が知られている。TGF-βを脳内に投与した時脳全体の活動がどのように変化するかを検討する目的でラットの脳波を測定した。ラット大槽にTGF-βを投与するためのカニューレを設置し、同時に脳の表面に接する電極を埋め込んだ。脳波を検出し、その波形を送信する装置をラット背部に埋め込んだ。TGF-βの投与により脳波θ波成分が増大し、α波成分が減少した。β波、δ波成分に変化は見られなかった。このような変化はラットに運動を負荷した時に見られる変化と同様であった。 ii.TGF-β受容体発現部位の組織学的検討 TGF-βは特異的な受容体と結合してその作用を細胞内に伝える事が知られている。これまでに報告されているI, II, III型の各TGF-β受容体cDNA配列より相当するオリゴヌクレオチドプローブを作成し、ラット脳切片に対しin situ hybridizationを行った。その結果I型は歯状回、II型は手綱と脳室、III型は海馬と側脳室に発現している事がわかった。 2.TGF-β脳内投与が全身におよぼす効果についての検討 i.呼吸商 ラット脳室にTGF-βを投与し、呼吸商を測定すると値が低下し、その内容を詳しく検討した結果脂質燃焼割合が増大している事がわかった。この結果TGF-βは単に疲労感を生成するだけでなく、全身に対して代謝の状態を変化させる作用のある事がわかった。 ii.体温・心拍数 ラット脳室にTGF-βを投与し、深部体温を測定すると投与後1時間後にわずかに体温が上昇する傾向が見られたが有意な差ではなかった。心拍数については変化は見られなかった。
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