前回までにスギ花粉アレルゲンに対する多数のアレルゲンが存在することが明らかとなった。これらアレルゲンのスギ花粉症患者血清IgEと結合するエピトープ構造を明らかにするために、今年度はファージディスプレー法を用いてIgEエピトープの解明を行うこととした。患者血清IgEは微量で沢山の種類が含まれるため、まずは市販のスギ花粉の主要抗原Cry j 1のモノクローナル抗体とランダムにペプチドを発現するM13ファージとの反応を解析した。 1、スギ花粉の主要抗原Cry j 1モノクロナル抗体と反応するファージの取得 Cry j 1モノクロナル抗体を結合したウェルにM13ファージライブラリーを加え、室温で1時間振盪した。ウェルをTBSTで10回洗浄し、モノクローナル抗体に結合したファージを0.2MGlycine-HCl(pH2.2)で溶出した。溶出したファージを1M Tris-HCl(pH9.1)15μlで中和し、大腸菌ER2738株に感染させた。精製し、溶菌させ、再度ウェルに固定化されたCry j 1モノクロナル抗体に結合させた。これらの行程を6回繰り返し、2種類のモノクローナル抗体を用いて10個のファージを取得した。さらにこのようにして得たファージをウェルに固定化して、それにCry j 1モノクロナル抗体を結合させることによって、さらに精製し最終的には3種類のファージを取得しファージDNAのシークエンス解析は行った。 2、pectate lyase Aを利用したCry j 1のホモロジーモデリング Cry j 1はpectate lyaseという酵素の1つであるので、Cryj 1の一次構造情報を利用してこれとホモロジーが高く既に立体構造の決定されているErwinia Chrysanthemi strain EC16を用いて、Cry j 1の三次構造を推定した。
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