研究概要 |
本研究では、カンキツ精油が有する新しい機能として、皮膚や組織の老化、並びに疾病の予防効果を系統的に、かつ成分化学的に追求することを目的として、生体内タンパク質、酵素、並びに活性酸素を中心としたフリーラジカルに対する精油成分の作用を系統的に解析することを目的とした。本年度の研究により以下のことが明らかとなった。 (1)酵素チロシナーゼの触媒作用に対する13種類の精油の影響を調べた。その結果、リスボン(LIS)、ユーレカレモン(EUR)、キヨオカダイダイ(KIY)に顕著な阻害活性が認められた。LIS, EUR、KIYは他の精油に比べて、sabinen、citral、neryl acetate、geranyl acetateを多く含有しており、活性にはcitralが関与していることが明らかとなった。その阻害様式は非拮抗阻害であった。またKIYではmyrceneも拮抗阻害様式で活性に関与していることが示唆された。 (2)化学発光法で評価したとき、YUZで最も高いスーパーオキシドアニオンの消去活性が認められた。関与成分に関する知見を得るために、スーパーオキシドアニオンに暴露した精油の揮発性成分について、ガスクロマトグラフィーによる分析を試みたが、顕著に減少するピークは認められず、その活性に非揮発性の成分が関与していることが示唆された。さらに精油中に共存するトコフェロール含量が、スーパーオキシドアニオン消去活性と一定の相関を示した。 以上の結果、カンキツ精油はタンパク質、酵素に共有的にあるいは可逆的に結合して、それらの分子の生化学的な機能を変化させることが明らかとなった。
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