研究概要 |
ユーカリの葉には加水分解性タンニンやフロログルシノールなどの様々なポリフェノール化合物が含まれており,多彩な生理活性が知られている.申請者らは,ポリフェノール類を多量に含むユーカリ葉抽出物をラットの飼料に添加すると,通常食(スターチ食)では何ら影響が見られないが,高スクロース食では体重増加が有意に抑制されることを見いだした.さらに,スクロースの多量摂取で引き起こされる高脂血症や内臓脂肪の蓄積もユーカリ葉抽出物によって抑制されることも明らかにした.このようなユーカリ葉抽出物の作用についてそのメカニズムを検討したところ,スクラーゼ阻害活性とともに腸管フルクトース吸収阻害作用を見いだした. スクラーゼ阻害について検討したところ,いくつかの加水分解性タンニン類に阻害活性が見いだされた.また,加水分解性タンニン類にはスクラーゼ阻害だけでなく,マルターゼやイソマルターゼに対する阻害作用も見られた.一方,フルクトース吸収阻害作用については,加水分解性タンニン類以外の画分に高い活性が存在した.さらにカラム操作等によって活性物質の精製を進めている. 申請者らは,ユーカリ葉抽出物には肥満予防・糖尿病改善効果だけでなく,抗炎症作用も持つことを明らかにしている.すなわち,ユーカリ葉抽出物を摂取させたマウスではリポ多糖の投与によって引き起こされるエンドトキシンショックによる肝臓障害が緩和された.さらに,リポ多糖がマクロファージのNO合成酵素誘導を引き起こすが,ユーカリ葉抽出物中の加水分解性タンニンのアグリコンである没食子酸やエラグ酸がこの誘導を強く抑制することを見いだした.加水分解性タンニン類は腸管で加水分解されアグリコンとなって生体内に取り込まれるので,これらアグリコンのNO合成酵素誘導がエンドトキシンショックの緩和に重要と考えられる.
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