<ミツバツツジ類の山取り実態と社会背景> 房総半島における分布域の変化をインタビューと現地調査により調べたところ、過去には大起伏丘陵地にも分布していたものが、現在は、小起伏山地に縮小していた。君津市内の自生区域では7割弱、市街地でも1割程度の民家でミツバツツジ類が植栽されており、自生地に近いほど地元の山採りが多かった。山採りは1970年から1985年の間に激化するが、この時期は炭焼きの衰退や山間部のダム・林道開発などにより農山村生活に変化が生じた。さらに臨海部で工業開発が進行し、市街地で急速な人口増加が起き、ミツバツツジ類の庭木需要が増大した。 <ミツバツツジ類群落の動態と林地管理様式> 房総半島におけるミツバツツジ類は新第三紀を中心とする砂岩・泥岩層域に分布していた。ミツバツツジの自生地は急傾斜で、土層が薄く、上層の植被率が低かった。キヨスミミツバツツジの自生地は土層が比較的厚く、上層の植被率は高かった。ミツバツツジの後継稚樹は少なく、薪炭林管理の放棄によってその発芽・定着セーフサイトが減少したと考えられる。 <ミツバツツジ類の生態遺伝> ミツバツツジ・キヨスミミツバツツジの自生地とそれらが植栽された民家において、両種間の雑種形成、ポリネーションなどについて調査を行った。自生地では両種の8%の個体で、中間的な形態、フェノロジー形質が観察された。民家由来の稚樹では27%の個体に形質異常が見られた。両種はコマルハナバチ、ニホンミツバチなど有効なポリネーターを共有しており、交配親和性も高いため、雑種が生じやすいと考えれる。葉緑体DNAの遺伝子間領域などを使って、両種と中間的形質の個体の遺伝的関係についての分析を試みた。
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