研究概要 |
<ミツバツツジ類苗生産の発達と山取抑止効果> 上総植木生産組合に保管されていた売上伝票の調査、関係者への聞き取り調査により、ミツバツツジ類苗の市場価格の変遷と苗生産の発達について調べた。庭に自然発生した実生を移植育苗した苗木生産が、1969年から萌芽的に始まり、80年代後半からは苗木市場への出荷が始まった。1996年には、「ミツバツツジの里づくり」運動の中で、ミツバツツジ生産研究会が組織され、種子からの繁殖技術が確立された。その結果、1980年代後半から4000円以下の苗が増加し、1995年からは1000円以下の苗が多数を占めるようになった。民家植栽個体調査から、1990年代以降、山取は減少した事がわかっているが、苗生産による価格低下はその一因を形成していると考えられる。 <ミツバツツジの地理変異> 関東地方のミツバツツジ自生地7カ所から標本を採集し、ミツバツツジの形態的・遺伝的種内変異について調べた。花形態に関する主成分分析の結果、第一には花冠長・裂片幅をはじめとした花の大きさに変異があり、第二には雌ずい長と雄ずい長のバランスに、地域間変異が見られた。もっとも大きい箱根の裂片幅はもっとも小さい君津のそれの2倍あった。いっぽう葉緑体DNA・matK領域を分析したところ、それらの集団間に変異は認められなかった。 <ミツバツツジ類における種間雑種形成の生態遺伝学的解析> 君津市豊英のミツバツツジ(Rd)・キヨスミミツバツツジ混生域と箱根金時山のミツバツツジ・キヨスミミツバツツジ(Rk)・トウゴクミツバツツジ(Rw)混生域において、それら種間の雑種形成について、matK領域と核DNA・ITS領域の分析を行った。その結果,RdとRk、RkとRwはそれぞれ親和性があり、自然交雑種を形成していた。Rk×RwはRd×Rkより高い頻度で生じていたが、Rkの花期がRwと同調しているためと考えられる。
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