房総半島におけるミツバツツジ類の分布域の変化をインタビュー・現地調査と庭に移植された個体の調査により調べた。過去の広い分布が、現在は、山地域に縮小していた。山採りは1970年から1985年の間に激化するが、この時期は炭焼きの衰退や山間部ダム開発などにより農山村生活に変化が生じた。さらに臨海部工業開発、市街地の人口増加によりミツバツツジ類の庭木需要が増大して、自生地の激しい減少を招いた。 植木市場の調査より、ミツバツツジ類苗の市場価格の変遷と苗生産の発達について調べた。実生苗生産が、1969年から萌芽的に始まり、80年代後半からは苗木市場への出荷が始まった。1996年には種子からの繁殖技術が確立された。その結果、1980年代後半から苗価格が下落し、野生苗の価値も低下した。その結果、山取が減少したと考えられる。 房総半島におけるミツバツツジ類は新第三紀を中心とする砂岩・泥岩層域に分布していた。ミツバツツジの自生地は急傾斜で、土層が薄く、上層の植被率が低かった。キヨスミミツバツツジの自生地は土層が比較的厚く、上層の植被率は高かった。ミツバツツジの後継稚樹は少なく、薪炭林管理の放棄によってその発芽・定着セーフサイトが減少したと考えられる。 ミツバツツジ・キヨスミミツバツツジの自生地とそれらが植栽された民家において、両種間の雑種形成、ポリネーションなどについて調査を行った。自生地では両種の8%の個体で、中間的な形態、フェノロジー形質が観察された。民家由来の稚樹では27%の個体に形質異常が見られた。両種はコマルハナバチ、ニホンミツバチなど有効なポリネーターを共有しており、交配親和性も高いため、雑種が生じやすいと考えれる。自生域個体については葉緑体matK領域と核DNA・ITS領域の分析を行い、自然交雑の形成を確認した。これらの雑種は民家環境でより生じやすいと考えられた。
|