研究概要 |
野辺山のカラマツ林内に尿素区(160g/m^2,1600g/m^2)と対照区(尿素非処理区)を、カナダ、アルバータ州のロッジポールマツ林内に尿素区(200g/m^2,1000gm^2)と対照区を設けた。土壌のpHは、両林共に対照区では5-7であり、尿素処理によって9まで上昇し、3ケ月後にはほぼ対照区のレベルまで低下した。NH_4-N濃度及びNO_3-N濃度は、共にpHと同様の変動パターンを示したが、カラマツ林ではNH_4-N濃度は処理後6ケ月で、NO_3-N濃度は処理後1年でほぼ対照区のレベルまで低下したが、ロッジポールマツ林では処理後2年を経過しても前者では対照区より100倍以上、後者では200倍以上高い値を保っていた。カラマツ林では、処理濃度に関わらず、処理後1年目に限り遷移前期の腐生性アンモニア菌6種の発生がみられたが、菌根性アンモニア菌は確認されなかった。ロッジポールマツ林では、処理濃度に関わらず、遷移前期のアンモニア菌6種の発生が確認され、Coprinus sp.は2年間に渡たって発生したが、いずれの処理区においても菌根性アンモニア菌の発生はみられなかった。各林内に埋設したカラマツの葉、材、ロッジポールマツの葉、材の2年後の重量減少率は、それぞれ50%前後、10%強であった。尿素処理によづて、カラマツ林では、葉で若干の分解促進、材で分解抑制がみられた。一方、ロッジポールマツ林では、同処理によって、葉、材の分解速度共に統計的に有意な差異はみられなかった。γ線滅菌したカラマツ落葉に、カラマツ林及び尿素区でそれぞれ優占種であったCoprrius spp.を接種・培養したところ、前菌種の方が高pH、高アンモニア濃度下でより旺盛に生長したが、両菌とも高いリター分解能を有することが確認された。以上から、高濃度窒素ストレス下の森林内での植物質分解過程の補償機構の一端が明らかとなった。
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