研究概要 |
平成14年度は対象種の選定と分子マーカーの確立に力点をおいて,研究に取り組んだ。 広域分布種の遺伝的分化や多様性の解析として,比較的分布域が広く,移動力に乏しいアオオサムシのマイクロサテライト領域の集団遺伝学的解析を行った。約10地点100頭の解析により,多型の割合に地理的変異が検出され,関東平野周辺の個体群が比較的単純な構造であるのに対し,中部地方の一部の個体群に著しい多型が認められた。東日本や北日本の個体群は氷河期以降に急速に分布を広げた可能性が指摘されており,この仮説と矛盾しない結果となった。 局地性分布種としてはナガゴミムシ類(一部,広域分布種を含む)を取り上げ,日本に分布する主要な亜属について核DNAおよびミトコンドリアDNAの解析を行い,系統性を検討した。この結果このグループの系統性の概要が明らかになり,生態的な情報と併せて,日本列島における分化過程を知る極めて大きな手がかりが得られつつある。 森林害虫としてはゴマダラカミキリなどの穿孔虫を中心に対象種のサンプルを集め,ミトコンドリアDNAなどの解析を準備中である。 いずれの研究も進行中であり,平成15年度以降さらに解析を重ね,対象グループを増やしてゆく予定である。
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