1種分化に関する解析 森林林床に普遍的に分布する地表徘徊性甲虫であるナガゴミムシ類の核DNA、ミトコンドリアDNAの解析を行った。本年度は西日本から韓国の種、特にNialoe亜属とその近縁種について解析をすすめ、このグループが韓国から西日本に至る地域での分化状況が明らかになった。 さらにブナなど山地性広葉樹の新芽を食害する種を含むルリクワガタ類3種の各地域個体群について東北から九州にかけて各地のサンプルを収集した。今後はまだサンプルを収集できていないホソツヤルリクワガタを含めミトコンドリアDNAの解析を進め、種分化・亜種分化の状況を把握する。 2遺伝的多様性の解析 地表徘徊性甲虫であるルイスオサムシとスルガオサムシについて単独分布域および混棲地域の各地で得られた216個体のミトコンドリアDNAを解析した。この結果57のハプロタイプが検出され、ある程度地理的なまとまりを持つものの、このうち6個が両種によって共有されていた。この原因として祖先多型の他、混棲地域での交雑に由来する遺伝子浸透も示唆された。 中国寧夏回族自治区のポプラの害虫として知られるツヤハダゴマダラカミキリとキボシゴマダラカミキリについてミトコンドリアDNAのCO1領域を解析したところ、両種にまったく塩基配列の差は、認められなかった。両種が極めて近縁であるか、浸透交雑をおこしていることが示唆された。 以上のように飛翔能力の有無を考慮しつつ、昆虫を中心とした森林動物群集の種分化、遺伝的多様性の解明を目指して平成16年度には研究の取りまとめを行う予定である。
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