研究概要 |
国内の3箇所でミミズ相の調査を行った.沖縄本島北部の琉球大学与那演習林のシイ林,真鶴半島魚付保安林のクスノキ林,そして北海道大学苫小牧研究林の落葉広葉樹林で,フトミミズの掘り取り調査を行い,種組成,個体数密度,現存量を測定した.同時に,ミミズと生息場所の落葉,土壌(層位別)を採取し,京都大学生態学研究センターで炭素と窒素の安定同位体比を測定した.与那ではヤンバルオオフトミミズが優占しており,その他に未記載の2種が生息していた.真鶴ではフトミミズ6種以上,ツリミミズ2種以上が生息していた.苫小牧ではフトミミズ3種以上,ツリミミズ1種を確認できた.安定同位体比は,炭素・窒素とも落葉から土壌の深い層にかけて値が大きくなる傾向を示した.ミミズのうち表層性種とみなされる種はいずれも落葉に近い同位体比を示し,土壌性の種は土壌に近い値を示したが,ヤンバルオオフトミミズは土壌に坑道を掘って生息するが,落葉に近い同位体比を持っており,日本ではこれまでに記録されていない,表層採餌性土壌性種(anesic)であることを確認できた. 苫小牧で野外マイクロコズムを設置し,優占種のヒトツモンミミズと等脚類のニホンヒメフナムシの個体数を操作して,落葉分解,土壌水の水質,土壌細菌群集,土壌小型節足動物への影響を解析した.ヒメフナムシは落葉を粉砕する効果をもっていたが,ミミズによる落葉の摂食および土壌との混合の効果は大きく,細菌群集,節足動物群集とも大きく改変された.森林土壌においてフトミミズがキーストン種であるとのデータを得ることができた.
|