研究概要 |
本研究の目的は、樹高程度の帯幅で伐採が行われる帯状・群状複層林の成長、収益性、生物多様性を従来の一斉林や二段林と比較しながら明らかにし、持続的経営林としての可能性を議論することにある。 まず、大分県湯布院町にある伐採後38年経過した群状林のスギ植栽木の成長を調査し、林縁付近の樹高低下は北側の林縁付近ではみられないことを明らかにし,伐区の形状は南北方向よりも東西方向に長くしたほうが,樹高低下のみられない領域が最大化されることを見出した。また,2つの38年生伐区から計10本,19年生伐区から5本の樹幹解析を行い,過去の成長パターンを明らかにした。その結果からも,北側に位置する林木は林縁の影響を受けにくいことがわかり,ある伐区に隣接して伐採する場合には南,東,西の方向に隣接させればよいと考えられた。 次に、宮崎県椎葉村にある群状伐区内のスギ・ヒノキ幼齢木の樹高成長に及ぼす要因を分析した。光環境(GLI),土壌深度,微地形(凹型,凸型,平行型)を独立変数として重回帰分析をおこなった結果,決定係数は最大で約0.5となり,3つの因子のうち,GLIがもっとも重要な因子であることがわかった。 さらに,大分県湯布院町と宮崎県諸塚村にある帯状複層林の下層植生の多様度を隣接する一斉林と比較した結果,種数にはほとんど差異は見られなかったものの,生活型ごとに見た場合,帯状複層林のほうが森林性の種が豊富であることが明らかになった。
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