本研究は3年間の研究計画であり、当初の実験計画に基づき本年度はオヒルギを主要な研究対象樹種とし、併せてメヒルギについても調査・研究を行った。 本年度の調査は主に沖縄島を対象として実施され、調査個体の枝ごとにすべてマーキングを行い、定期的にフィールドでの観察調査を実施するとともに、研究室に試料を持ち帰り実体顕微鏡による外部形態に関する写真撮影と、寒天培地(1.5%寒天、15%スークロース)を用いての花粉発芽試験(25℃、24時間)等を行った。 オヒルギは周年開花しているが7月〜10月の開花数が多く、特に8月が開花最盛期であった。5月〜8月のオヒルギの訪花昆虫としては沖縄の在来種ではないセイヨウスズメバチが多かった。9月〜10月の訪花昆虫としてはスズメバチ類、ホウジャク類が優占しており、11月〜翌年2月までは鳥類のメジロの訪花が優占していた。 メヒルギの開花は5月〜9月であり、7月が開花のピークであった。訪花昆虫の種数は7月の開花ピークにシンクロしており、ハチ目、チョウ目、コウチュウ目の昆虫であり鳥類の訪花は観察されなかった。 オヒルギの花粉発芽能力は1〜2月に開花したものでは著しく低下し、1個の葯に含まれる花粉粒数も減少した。また、オヒルギでは花密の分泌量にも季節的消長が認められた。 なお、オヒルギ、メヒルギともに花粉袋をかけて自家受粉の割合の観察を継続している。 次年度は当初の研究計画に基づき、本年度の継続と、ヤエヤマヒルギなども研究者対象として、周年調査を実施し、訪花昆虫の樹種間の違い、自家受粉の割合、人工交配等を実施することにより、開花フェノロジーの把握、風媒・虫媒・鳥媒・自家受粉などの受粉機構の解明に関する調査・研究を継続し、マングローブ樹種の開花・受粉機構とポリネーターの確定を行う予定である。
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