1.調査対象渓流の選定、調査対象堰堤の抽出 昭和13年(1938)の阪神大災害以来66年の間、砂防および治山事業が積極的に実施され、現在までに約600基の砂防、治山堰堤が建設されてきている兵庫県南部にある六甲山系(約200km^2)を調査対象地として選定した。さらに六甲山系の中から、住吉川、芦屋川、都賀川、新生田川、有馬川、有野川等を調査対象渓流として選定した。 これらの流域に関する空中写真、地形図、設備台帳を収集し、流域内にある砂防・治山堰堤約290基を抽出してそれらの堰堤の規模、建設時期、構造等を調査した。 2.堆砂地内の植生・流路の経年変化 空中写真、地形図を用いて空中写真判読を行い、堆砂地における土砂の堆積の変化、植生(草地、森林地)の分布の変化等を調査した。この結果、堰堤の規模が大きいほど堆砂地面積が増大するため、堆砂地内での流路の変化が起こりやすくなり、堆砂地内での森林の回復が遅くなり草地が占める面積が大きくなる傾向があることが分かった。また、1940〜1950年代に建設された堰堤の堆砂地では新しく建設された堰堤の堆砂地と比較して堆砂が進んでいるため流路の変動により草地の面積が多くなる傾向が認められた。 3.堰堤堆砂地内の植生分布の状況に関する現地調査 住吉川等の流域において堆砂地内の植生を現地にて調査した。この結果、堆砂地内ではオオヤヤシャブシ、ネコヤナギ、ヤマウルシ、アカマツ等の樹木が、草本としてはツルヨシ等が生育していることが分かり、周辺の斜面の植生とは異なることが分かった。
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