研究概要 |
鹿児島県においてマテバシイの内生菌の宿主内分布、地理的分布及び時間的変動パターンを検討した。また、照葉樹林の構成樹種の内生菌相を比較調査している。鹿児島県の桜島、鹿児島大学高隈演習林、同本部試験地においてマテバシイ成木の生葉・生枝の内生菌相を調査し、内生菌相が調査地によって大きく異なることを明らかにした。また、桜島においては当年生実生の全身的な内生菌相を調査し、内生菌の宿主個体内における分布様式を明らかにした。一方、高隈においてはマテバシイ、タブを始めとする照葉樹林の構成樹種十種の生葉の内生菌相を調査し、同定作業を行っている。 茨城県小川学術参考保護林で、ブナ生葉に内生する菌類相およびその季節的変動を明らかするため、5月から10月まで、ブナ生葉からの菌類分離試験を時期別に行った。ブナ生葉における主要な内生菌類は、Mycosphaerella buna, Ascochyta fagi, Tritirachium sp., Periconiella sp., Xylaria sp.の5種であった。比較として行った東北地方のブナ生葉からの分離では、過去に裏日本のブナ生葉の主要な内生菌として報告があり、小川学術参考保護林のブナから出現しなかったDiscula sp.およびAscochyta属1種が出現し、地域によって内生菌菌類相に差があることが明らかになった。 森林総合研究所九州支所構内に植栽された照葉樹林を構成するブナ科樹木3種について、葉に内生しているエンドファィト群集を明らかにする目的で、表面殺菌した後、分離される菌類群集について調査した。これら3種の葉には全てエンドファイトが存在していることが明らかになった。また、一種の樹木からは10-20種のエンドファイトが分離され、種構成は多様であるが、優占するものは数種に限られる傾向が見られた。
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