森林総合研究所九州支所(熊本市)の実験林に植栽されているアラカシ、イチイガシ、ウラジロガシの葉に生息する内生菌について検討した。3種の樹種から夏期には合計36種、秋期には合計28種の内生菌が分離され、そのうち12種が共通して分離された。それぞれの樹種から夏期には14から21種、秋期には15から17種の内生菌が分離されたが、そのうち1ないし数種の菌が優占していた。その他の多くの菌は分離率が低く、内生菌群集を構成する種は多様であるが、数種のものが優占するという内生菌群集の特徴と一致した。また、3種の樹種間で共通に分離される菌が存在した。さらに、クロマツを用いて、同一樹種における内生菌相が地理的に近い地域の異なる林分間でどの程度違うかを明らかにするため、鹿児島県桜島の4林分において内生菌相の比較調査を行った。2004年4/9、8/3、11/10の三回にわたり、桜島島内の有村、碩原、黒神、湯之平のクロマツ林分からクロマツの当年枝を10本それぞれ別固体から採取した。採取した枝は、4/9は針葉中央部と基部、他二回は針葉中央部、針葉基部、枝の各部位から長さ約5mmの断片を切り取り、70%エタノール、15%過酸化水素水、70%エタノール各1分間の連続処理による表面殺菌を施した後、2%麦芽エキス寒天培地上、20℃で培養した。針葉中央部では、常にLophodermium sp.が優占種として分離されたが、4/9においてはPhloeosporella sp.も高頻度で分離された。針葉基部では、Phialocephala sp.が比較的高頻度で分離された。枝ではPhomopsis sp.が優占種であり、Colletotrichumgloeosporioidesがそれに次いだ。調査地間で菌相を比較した場合、針葉中央部においては林分間の差が比較的大きかったが、針葉基部と枝においてはどの林分でも菌相は類似していた。この違いは、各部位の主要な内生菌の感染、生存様式と関連があると考えられた。
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