研究概要 |
土壌汚染物質のリグニンへの取り込みを調べるためにコニフェリルアルコールとp-クロロアニリンをHRP/H_2O_2の下で反応させ、混合型脱水素重合物(Cl-DHP)を調製した。同様に、コニフェリルアルコールのみからコントロールの脱水素重合物(G-DHP)を調製した。2次元NMRや熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて両者の性状を比較した。Cl-DHPの収率は4.4%でG-DHPの収率の74%と比べると極めて低かったが、元素分析(Cl 3.44%;N 1.47%)よりCl-DHPはコニフェリルアルコール:p-クロロアニリンが5:1で構成されていることが明らかとなった。2次元NMRはCl-DHPはβ-β単位及びβ-5単位に帰属されるNMRシグナルを示したが、α-O-を持つβ-aryl ether単位に帰属されるNMRシグナルは殆ど示さなかった。テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを用いる熱分解ガスクロマトグラフィー-質量分析では、Cl-DHPからはp-クロロアニリン類が多量に生成したのに比べ、β-aryl ether単位由来の熱分解生成物[1-(3,4-dimethoxyphenyl)-1,2,3-trimethoxypropane]は殆ど見られなかった。また、少量ではあるが、(4-chlorophenyl)[1-(3,4-dimethoxyphenyl)-2,3-dimethoxypropyl]-amineが検出された。一方、β-β単位及びβ-5単位由来の熱分解生成物[pinoresinol dimethyl ether及びtetramethoxystilbenes]およびコニフエリルアルコール末端基由来のコニフェリルアルコールジメチルエーテルはG-DHPと同様検出された。これらのことから、p-クロロアニリンがβ-aryl ether単位に取り込まれていることが示唆された。特に、α-位と反応していると思われた現在、より定量的な知見及び低分子区分の知見を収集している。
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