研究概要 |
1.乾燥応力に基づく破壊靱性試験法の検討 試験体の両端の長さを固定すると水分蒸発によって起こる木材の自由収縮が拘束され、木材内部に応力が発生し、この内部応力が固有値に達すると木材の破断が起こる。まず、常温における小型試験装置を試作し、片側き裂試験体による破壊靱性試験法の検討を行った。乾燥中の応力生長と破壊時の限界応力拡大係数K_<IC>を計測できるようにした。高温乾燥過程を加圧水蒸気およびシリコンオイル中で再現するため。ガラスセル(150℃,1MPa)と高温耐湿型のロードセルを組み合わせる装置を設計し、試作した。次年度にこのセルを用い、各種高温条件での実験を実施する。 2.実機によるスギ高温乾燥で発生する内部割れの検討 実機による高温乾燥を行ったのち、中央部を切断して内部割れの発生を計測した。内部割れが確認される平均含水率は30〜40%からであり、内部割れ付近の小片含水率は全て30%以下であった。内部割れは年輪の晩材部分から発生し、両側の早材部に進展していた。き裂停止位置は、早材部で年輪界から木表側に年輪幅の30〜40%の位置であった。木表側への進展のほうがやや早く停止する傾向が見られた。さらに、隣接する年輪における微小き裂が合体し、長い乾燥割れに進展したと考えられる。合体による乾燥割れ長さは、仕上がり含水率と関係していない場合もあった。このことから、微小き裂の発生には局所的な力学条件が支配的であり、年輪境界部における晩材と早材の収縮率の差異に基づく内部応力の発生に原因があると考えられる。微小き裂の合体による乾燥割れの生長には、木材内部のグローバルな応力生長が関与していると考えられる。き裂の停止には、剛性の小さな早材部における応力の緩和が関与することが推測される。次年度に、き裂の発生および停止の力学パラメータの決定を試みる。
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