研究概要 |
昨年度の研究を発展させ、コハウチワカエデ、クヌギ、ケヤキ、ユーカリ3種(E.globules, E.grandis,)の引張りあて材の各種物性発現機構に続いて、E.dunnii,を供試樹木に加え、その引張あて材の組織的特徴と物性との関係を実験的に比較検討した。コハウチワカエデ、クヌギ、ケヤキについては、とくにG繊維を含む引張あて材のヤング率が、乾燥に伴って劇的に増加すること、その直接原因として、ゼラチン層(G層)が水分放出によって急激に硬化するためであることが確実となった。このメカニズムを説明するために、G繊維細胞の多層複合円筒状構造をモデル化し、ヤング率と含水率との関係を数値力学シミュレーションによって検討した。その結果、G層を構成するセルロース(重量比率にしてほぼ90%として)の結晶化度は、greenな状態では他の二次壁に比べて極めて低く(二次壁が50%に対しG層は22%程度)、水分放出によって次第に結晶性を増し、そのためにG繊維自体の弾性係数が増加することが推察された。 ユーカリ3種においても同様な推論が得られた. (2)G層の端離収集に関する予備試験(継続) プレパラートから単離したフラグメントが多量のG層を含むのは分かったが、同時に破砕した二次壁、道管要素壁、あるいは穿孔板と思われる塵状のフラグメントが混在しやすいことが分かった。樹種によっては微量ではあるが、分析に供するだけの量のG層フラグメントを得るには、何らかの工夫が必要と思われた。遠心分離法が有効な手順であることが,実験によって示唆された.
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