研究概要 |
1.生合成中間体の探索:スベリン芳香族部分の前駆体と予想されるケイ皮酸エステル類を、アベマキ及びイチョウの外樹皮粉を用いて分析した。この結果、アベマキにおいてはカフェ酸エステルが、イチョウにはフェルラ酸エステルが多く存在することが示された。このことから、スベリン芳香族部分は樹種により異なる組成を持ち、アベマキにおいてはカフェ酸エステルが、イチョウにおいてはフェルラ酸エステルが主要な構成成分であることが示唆された。今後、他の生合成中間体と予想される物質の探索を行なうとともに、これら予想前駆体の詳細な定量実験も行なう。 2.モデル化合物の重合体分析:ケイ皮酸エステル類がどのように重合し、スベリン芳香族部分を形成しているのかを調べるために、モデル系としてフェルラ酸ブチル、カフェ酸ブチルを用いた脱水素重合実験を行なった。この結果、フェルラ酸ブチル重合物からβ-O-4'型,β-5'型、ジヒドロナフタレン型、ナフタレン型及びβ-β'型2量体を、カフェ酸ブチルからはβ-6'型及びジヒドロナフタレン型2量体の生成を確認した。このことからスベリン芳香族部分には上記の結合様式の存在が示唆された。 3.外樹皮分解物の分析:スベリン芳香族領域の結合様式を解明するために、抽出成分を除いたイチョウ外樹皮粉をメタノリシスし、分解物の分析を行なった。これによりフェルロイルオキシ脂肪酸メチル類と示唆される物質が得られた。今後、アベマキにおいても同様の操作を行ない分解物中の2量体を探索する。また、他の分解条件での分析も行なう。 4.フィーディング実験:^<14>Cで標識したρ-ヒドロキシケイ皮酸をアベマキ及びイチョウの若枝に投与した。現在、この基質がスベリン芳香族部分及び予想前駆体にどのように取り込まれているのかについて分析を進めている。また、他の基質を用いたフィーフィング実験も行なう。
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