研究概要 |
1.樹皮の塩基性メタノリシスによる構造解析:アベマキおよびイチョウの樹皮粉を,各種有機溶媒及び熱水で抽出して,脱脂樹皮粉を調製した。これを無水メタノール中ナトリウムメトキシドによって80℃で2時間処理した。アベマキからフェルラ酸メチル,フェルロイルオキシ脂肪酸メチル,β-0-4'エノールエーテル型フェルラ酸メチル2量体,β-5'ベンゾフラン型フェルラ酸メチル2量体,β-5'スチルベン型フェルラ酸2量体のフェルロイルオキシ脂肪酸メチルエステルを同定した。イチョウの場合も,HPLC分析によって同様のピークを検出した。樹皮試料のメタノリシスにおいて,フェルラ酸誘導体の2量体以上の重合体を単離した例は,これが初めてである。さらに,そのフェルロイルオキシ脂肪酸メチルの単離も初めてである。よって,外樹皮コルク質のスベリン芳香族部分がフェルラ酸エステルの重合体であること強く示唆する結果が得られた。 2.フィーディング実験:[U-^<14>C]フェニルアラニンをアベマキおよびイチョウの切り枝から吸収させて,約1ヶ月代謝させた。今後,脱脂樹皮粉を調製し,メタノリシス処理で生じる上記2量体等への放射能の取込みを調べる。 3.スベリン高分子の精製とその芳香族部分の構造:アベマキおよびイチョウの脱脂外樹皮粉に各種の処理を施して,FT-IRおよび固体^<13>C-NMRを測定し,直接スベリン芳香族部分の構造を解析した。遊星型ボールミルによる微粉砕処理時間はアベマキで4時間,イチョウで8時間とした。また,酵素でセルロース,ヘミセルロース,ペクチンを除く条件を検討し,セルライザーHT,ヘミセルラーゼ「アマノ」90,viscozyme Lが適していた。最適条件で酵素処理を行ったところ,3日間で大部分の多糖類を除けた。一方,脱脂外樹皮粉を硫酸処理して(クラーソン法),残渣の構造の検討もした。芳香族と脂肪族エステルの違い,およびリグニンとフェルラ酸重合体エステルの違いを明解に見出すには至っていない。
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