イチイ属樹木、キャラボクから見出したタキソール生産能の高いペスタロッチア菌を用いて、(1)タキソールの生産のための培養条件を検討するとともに、その培養時に生合成前駆体等を添加して、タキソール生産量増加上について検討した。また、この菌が生産するタキソール以外のタキサン化合物についても調べた。また、(2)ペスタロッチア菌のタキソール生産性を向上させるため、変異処理や融合菌の作出などによりタキソール生産量を増加させることを試みた。更に、(3)バイオリアクターを用いた固定化細胞培養を併用することによるタキソールの生産についても検討した。また、菌がタキソール以外のタキサンルをキャラボク以外のイチイ属樹木からタキソール生産能の高い糸状菌を単離することを試みた。 (1)菌の培養を静置培養から振とう培養、固定化培養に変えて検討したが、タキソール生産量は静置培養の約1/10であった。生合成前駆体としての糖(スクロースを基本)の組成および量を変化させて検討した結果、グルコースに少量のミオイノシトールを添加することによりタキソール生産量を1.3倍増加させることが出来た。また、培地中に生合成阻害剤を添加してその生産量の増加を試みたが、生産量は増加しなかった。更に、培地中の窒素量を変更してタキソール生産におよぼす影響を調べた結果、窒素量を1/10倍にした場合に、タキソール生産量が1.3倍増加することを見出した。菌の培養によりタキソール以外に一種のタキサン化合物が生産されることを見出した。 (2)菌を紫外線照射や化学試薬により変異処理したが、いずれの処理でもタキソール生産量は増加しなかった。また、細胞融合によりタキソール生産能の高い融合菌の作出を試みた。 (3)菌の培養によるタキソール生産と固定化細胞を充填したバイオリアクターによるタキソール生産を併用すれば、タキソール生産量が大幅に向上する事も見出した。また、イチイ属樹木から新しく単離した数種の菌を用いて栽培した結果、研究に用いた菌よりもタキソール生産能の高い菌を見出すことが出来た。また、イチイ属樹木、キャラボクの抽出成分およびタキソールの抗菌性、内樹皮に生息するスタロッチア菌の抗菌性とが関連していることを見出した。
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