研究概要 |
本研究は,仮道管や道管,木繊維などの細胞中を移動する液体の様子を直接可視化,動的観察し,木材中の液体浸透機構を解明することを目的としたものである。昨年度に続き,動的観察を試み、以下の結果を得た。中国人工林木材であるコウヨウザン,ポプラならびに本邦産ヒノキ材について,減圧下における仮道管ならびに道管,木繊維中の液体移動を検討した。その結果,コウヨウザン,ポプラにおける浸透は,進行・停滞→準行・停滞を繰り返して行われ,減圧度0kPaにおける液体浸透は,コウヨウザンに比べてポプラ材の心辺材のいずれも小さい。しかしながらポプラ材の場合には減圧度が増すと,道管,及び道管から放射組織への液体移動が著しく拡大されるため,減圧注入ではコウヨウザン材よりもポプラ材で浸透が良好となる。コウヨウザン心材の浸透量は,減圧度10kPa以上で著しく増大する。コウヨウザンとポプラ材では減圧下の浸透挙動が基本的に異なる。ヒノキ材の各種前処理材(無処理材,熱水抽出処理材,横圧縮処理材,熱水抽出・圧縮処理材)の浸透性を詳細に検討した結果,仮道管中の液体浸透経過について,浸透長が√t(t:時間)にほぼ比例する経過を認め,仮道管中の液体移動速度係数(S)を求めて詳細に検討した。また,その特徴を仮道管中の浸透様式と対比して原因を考察することができた。2年間にわたる検討結果は,詳細に研究成果報告書として取りまとめ,公表する予定である。
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