研究概要 |
(1)ホタテガイ血球トランスグルタミナーゼの生体内基質タンパク質の探査 血球ホモジネートを10℃で反応させると、蛍光性アミンMDCは血球不溶性画分の230k、血球水溶性画分の100k成分に顕著に取り込まれた。MDC非存在下で架橋重合させると、反応開始5分でゲルに入らない成分が生成し、先の230k,100k成分の減少と新たに血球水溶性画分の210k成分の減少が確認され、これらが生体内基質であると推察された。 このうち、特に消失の早かった230k成分について構造解析を行い、2成分のアミノ酸部分配列(MPFPVIFYVおよびIPIGDYSDK)を得た。この配列をアミノ酸配列データベース上で検索した結果、前者はミトコンドリア外膜のタンパク質との相同性が確認された。今後、230kの他の断片の解析を進め、他成分の配列分析も行う予定である。 (2)創傷時酵素作用の検出 生きたホタテガイに創傷を与え、経時的に創傷部を採取して解析したが、電気泳動分析では顕著な相違を検出できなかった。そこで、貝柱切片を人工海水中で保存し、表面と内部のMDC取込みを見たところ、表面部分に顕著な蛍光が見られトランスグルタミナーゼの作用が確認できた。また、表面にはGL結合も検出され、架橋重合も起こっていることが確認された。但し個体差が大きいため継続して解析する必要がある。 (3)血球細胞凝集塊の解析 測定チップはヒト全血用のBloody-6(呼び径7μm)が利用できたが、循環水は生理食塩水ではなく人工海水が必要であった。また、採血時の凝集を避けるために、EDTA存在下で心臓から採血する必要があった。更に、ホタテガイは麻酔して採血するほうが良いことが分かったので、現在迅速な麻酔方法を検討中である。以上のように、測定方法がある程度確立できたので、次年度以降は本装置で凝集状態測定を行う。
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