研究概要 |
(1)ホタテガイ血球トランスグルタミナーゼの生体内基質タンパク質の構造解析 昨年度、本酵素の生体内基質と同定されたホタテガイ血球230k,210k,100k成分について構造解析を行った。内部構造は、いずれも目的のPVDF膜断片をBrCN分解して解析した。 230k成分は、N末端配列9残基と、5個のBrCN断片配列5〜7残基が解析できた。昨年度の報告と合わせて、都合8箇所の部分配列が解析できたが、いずれもアミノ酸配列データベース上では既知のタンパク質との相同性は確認できず、新規タンパク質の可能性が考えられた。210k成分のN末端はブロックされていたが、1個のBrCN断片配列は解析できた。しかし、現時点で230k成分との関係は明らかではない。 100k成分は、N末端および2個のBrCN断片配列が10残基程度解析できた。特に、BrCN断片配列の一つは、既知のTG配列と非常に高い相同性を示し、100k成分は血球TGそのものであることが推定された。次年度は、各成分の配列分析を更に進め、配列相同性についても詳細な検討と考察を行う予定である。 (2)ホタテガイ血球細胞凝集の解析 麻酔したホタテガイの心臓から血リンパ液を採取し、10mM CaCl_2またはEDTAを含む人工海水で2倍に希釈した試料200μLをMC-FANに供し、試料通過時間を計測した結果、貝の個体差は大きいが、全体の傾向としてCaCl_2存在下の方が、血球通過時間が長く、ビデオ映像でも大きな凝集塊が確認できた。同条件で濁度変化を見ても、CaCl_2存在下でのみ濁度低下が確認された。但し、EDTA中で作用する微生物TGが濁度に影響しなかったので、酵素よりもイオン環境の変化が血球凝集の重要な因子である可能性も考えられた。次年度は、酵素または阻害剤添加が血球通過時間の変化に及ぼす影響を検討する。
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