研究概要 |
(1)生体内基質タンパク質の構造解析と同定 ホタテガイ血球トランスグルタミナーゼ(TG)の生体内基質と同定された血球タンパク質230k,210k,100k成分のアミノ酸配列をエドマン分解法により更に検討した。230k成分はN末端配列9残基に加え,BrCN断片であるCN-32k,26k,20k,18k,17k,11kについて7,8,12,10,12,9残基の配列を明らかにした。このうちCN-17k成分の配列はフィラミンとの相同性が検出された。210k成分は230kに比べて少量でBrCN断片42k成分の8残基のみ解析可能であった。100k成分は、N末端12残基およびBrCN断片CN-30k,15kの15残基の配列が明らかとなった。CN-30kの配列は既存TGと高い相同性を示し100k成分は酵素本体であると推察できた。今後は以上のタンパク質レベルでの解析結果から適当なプローブを作成しcDNAクローニング法によって全配列を決定する必要があると考えられる。 (2)シジミガイTGの酵素学的特性 汽水産ヤマトシジミの足筋よりTGを調製しその酵素学的特性を調べた。大変興味深いことに,ヤマトシジミにはホタテガイTGと同様の海産型酵素の他に,淡水産型,中間型のTGアイソザイムが存在していた。これは塩濃度環境の変化に適応した結果だと推察された。また淡水産セタシジミの場合も静電的性質の異なるアイソザイムが存在したが,いずれも淡水産型酵素であった。シジミガイにおけるこれら酵素アイソザイムの存在は,本酵素が細胞内ではなく細胞外で作用している可能性を支持していた。 (3)総合考察 以上の結果,軟体動物二枚貝類のTGは細胞外環境で血球成分を架橋重合し血球凝集を通じて創傷治癒に関与していることが示唆された。今後はcDNAクローニングにより酵素および基質タンパク質の全構造解析が必要と思われる。
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