研究概要 |
熱帯域のアマモ場における魚類群集の構造を解析し,その群集構造が隣接するサンゴ域や砂地のものとどの程度異なっているかを明らかにするために,沖縄県西表島の網取湾において2002年8月と11月に野外調査を実施した。ウミショウブが優占的に繁茂するアマモ場と,それに隣接する砂地,および礁原の沖側に存在する枝状サンゴ域のそれぞれに,1m×20mのベルト・トランセクトを5箇所設定し,各トランセクト内の魚類の種数と個体数を計数した。 8月において,アマモ場で観察された魚種は42種であり,サンゴ域では138種,砂地では17種であった。11月においては,アマモ場で17種,サンゴ域で114種,砂地で13種が観察された。アマモ場に生息していた成魚と稚魚の種数と個体数をサンゴ域のものと比較したところ,後者のほうが有意に多いことがわかった。一方,アマモ場と砂地を比較すると,成魚の種数と個体数では有意な差は認められなかったが,稚魚の種数と個体数ではアマモ場のほうが多い傾向にあった。また,アマモ場とサンゴ域の魚類は,成魚と稚魚ともに11月よりも8月で多く,季節変動がみられた。 アマモ場で観察された魚類の中には,サンゴ域でもみられた種が存在した。しかし,そのような種はサンゴ域で観察された魚種の15%以下であった。さらに,アマモ場と砂地の共通種はほとんどいなかった。このような結果から,網取湾のアマモ場でみられる魚類群集は,アマモ場を利用する一部のサンゴ域魚類と,アマモ場のみで生活する専住魚とによって構成される群集構造をもっていることがわかった。
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