研究概要 |
海草の密度や草丈が異なると,稚魚の加入量が変化するかどうかを,2003年5月に西表島網取湾で人工海草魚礁を用いて検証した。人工海草には,ポリプロピレン製の紐(幅10mm)を用い,これをスチール製基盤(縦50cm×横50cm)に取り付けたものを人工海草魚礁とした。本実験で用いた人工礁は,(1)海草の密度と草丈が高いもの(密度は人工礁あたり144本で,草丈は50cm),(2)密度は低く,草丈が高いもの(密度は64本で,草丈は50cm),(3)密度は高く,草丈が低いもの(密度は144本で,草丈は20cm),(4)葉がなく,基盤だけのもの(コントロール)の4種類で,これらをアマモ場に隣接する砂礫地に設置した。そして,各人工礁に加入した稚魚を潜水観察によって14日間,毎日記録した。 実験期間を通して,合計7科10種の稚魚が人工礁に加入した。これらの稚魚の中で,ヤライイシモチの個体数が最も多く,全体の85%を占めた。そこで,ヤライイシモチの個体数を4種類の人工礁の間で比較したところ,(1)タイプの人工礁には,(2)タイプや(3)タイプの人工礁よりも多くの稚魚が加入し,また,(4)タイプの人工礁には,稚魚がまったく加入しないことがわかった。したがって,これらの実験結果より,海草の密度や草丈が高いほど,多くのヤライイシモチ稚魚が加入することが明らかとなった。構造が複雑な海草パッチは,被食の危険が高い稚魚にとっての,格好の避難場所,あるいは隠れ家となっているのではないかと考えられた。
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