研究概要 |
マグロ延縄漁業における海鳥類,ウミガメ類の混獲回避措置を検討するために,現業船で用いられでいる漁具(枝縄)を調査し,投縄後のマグロ延縄漁具の沈降を速める枝縄の改良を行ったと同時に,水中投縄機を開発した。さらに,ウミガメ類の混獲を避けるために,すべての釣針を同一目標水深に敷設する方法について検討した。本研究課題で得られた成果を以下に示す。 (1)初年度では実施計画に従い,現在日本のマグロ延縄漁業で用いられている30数種類の枝縄を調査し,枝縄の構成やその特長を明らかにした。これらの枝縄から対象魚種が特定できた10種類について,海上実験により着水後の釣針の沈降速度を調べ,投縄時に海鳥を追い払う鳥嚇しラインの威嚇範囲内では,釣針が海鳥の潜水深度以深に到達しないことを確認した。次に,釣元のテグス材料にフロロカーボンを用い,また釣元先端に取り付ける錘の重さと錘の取り付け位置を変えて同様な海上実験を行い,釣元を適切に重くした改良枝縄を用いた場合では,鳥嚇しラインの有効威嚇範囲内に十分な水深にまで釣針を速く沈降させることができることを確かめた。 (2)本年度では海烏混獲防止用の水中投縄機を開発し,本学の研究練習船で行った実操業試験により,餌の付けられた釣針は常に水面より1.3m以深に放出できることを確認した。また,枝縄を改良した漁具も含めて,流れのある海中に敷設されたマグロ延縄の形状を実験と理論モデルの両面から明らかにした。最後に,ウミガメ類の混獲回避を目的として,浮縄とは別の中立ブイをマグロ延縄の幹縄に直接取り付ける方法を考案し,中立ブイの取り付け位置や浮力を変えることによって,全ての釣針をほぼ同一目標水深に敷設することが可能であることを明らかにした。 このように,本研究では当初の目的が達成され,改良した枝縄及び開発した水中投縄機を用いることによって鳥嚇しラインを併用した操業では海鳥類の混獲回避が期待でき,また中立ブイを用いた新しい操業方法の導入により,ウミガメ類の混獲を低減できるだけでなく,マグロ延縄操業の簡素化も期待される。
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