現在のところ、UV(紫外線)を感受する錐体細胞はAccessory corner-coneとされている(Avery et al. 1983)。昨年度はスズキ目ノトセニア科のボウズハゲギスとショウワギスがUV(紫外線)を感受する錐体細胞を持つことを報告した(Miyazaki et al.2002)。本年度は、スズキ目テッポウウオ科とダツ目ヨツメウオ科魚類がともに空中視覚に優れていることから、それらの網膜にUV(紫外線)を感受するAccessory corner-coneがあるかどうかを調査研究した。 テッポウウオ(Toxotes jaculatrix)は水中から空気中にいる昆虫類を見つけ、水を口から吹き付けてその昆虫を水面に落として捕食する。網膜の伸展標本を作成し、テッポウウオの視軸を調べた。その結果、視軸は前方45度の方向にあることがわかった。つまり、テッポウウオの中心野は網膜の腹側部にあった。しかし、予想とは異なり、テッポウウオは紫外線を感受する錐体細胞を持たないことがわかった。 ヨツメウオ(Anableps anableps)は常に眼を水面上に出して泳ぐ汽水魚である。その網膜には紫外線を感受する錐体細胞が観察された。それらの紫外線細胞は網膜の中心部に多くみられ、周辺部には存在しなかつた。視軸は前上方にあり、ヨツメウオは水面上を注視することがわかった。現在、ヨツメウオからmRNAを抽出し、単離したUVオプシン遺伝子からRNAプローブを作成し、in situハイブリダイゼーションを試みている。 尚、表層魚シイラ、深海魚シマガツオに紫外線を感受する錐体細胞があるかどうかを険討したが、少なくとも成魚には紫外線細胞が確認できなかった。
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