魚類、両生類(サンショウウオ)、爬虫類(ヤモリ、カメレオン)、鳥類(カナリヤ)さらには哺乳類の一部(ラット、マウス)までもが紫外線感覚を持ち、摂餌、配偶者選択、コミュニケーション等に利用している。一般に紫外線感覚を持つとされる動物群(例えば、魚類)でも、そのすべてが紫外感覚を持つわけではなく、深海性のシーラカンスは紫外部感光色素を持たない。多くの表層魚は紫外線にさらされる可能性があるので、スズキ亜目テッポウウオ科テッポウウオ(Toxotes chataleus)とカダヤシ目ヨツメウオ科ヨツメウオ(Anableps anableps)の2種を使ってその視覚特性と紫外線感覚について組織学、分子生物学の両面から検討した。 テッポウウオは空気中の昆虫等を水鉄砲で撃ち落とす。網膜進展標本から、テッポウウオは網膜の腹側頭部中心野を持つことがわかった。また、水平線上と下方向をまったく無視し、雑食性(魚食、昆虫食)の強い魚であることが推測された。不思議なことに、テッポウウオは紫外線感覚に関与するUV-CONE(ミニチュアーコーナーコーン)を持たないことがわかった。一方、ヨツメウオは良く発達した水平状のvisual streakを持ち、そのvisual streakの側頭部と網膜底部を用いて水面の前方と側方に注意を向けていることがわかった。さらに、ヨツメウオは紫外線感覚に関与するUV-CONE(ミニチュアーコーナーコーン)を網膜底部に多くもつことがわかった。このことから、ヨツメウオは主に側方部で紫外線感覚を利用することが示唆された。現在のところ、分子生物学的研究は継続中であり、再現性のある結果はまだ得られていない。おそらく、Yokoyama(2000)のSWS1と同様なOPSIN Geneがミニチュアーコーナーコーンに発現するものと予想して研究を継続している。テッポウウオとヨツメウオの視覚特性に関する論文を準備中である。
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