1)本年度は標識タグで個体識別したキンギョの自発摂餌行動をデジタルビデオカメラによって観察撮影し、個体ごとの、1)スイッチ引き行動への関与の程度、2)ペレット摂取量、について解析した。100L円形水槽内に標識したキンギョ2個体あるいは3個体を収容して自発摂餌により飼育した。実験は自発摂餌のスイッチを1日の一定の時刻に水槽に設置し、2時間後に取り外すという方法で行い、この間を1セッションとして自発摂餌行動を解析した。実験期間のセッション数は20セッションとした。2個体からなるグループでは、スイッチ引きに関与する個体と関与しない個体が生じた。スイッチ引きに関与する個体のスイッチ引き回数はセッションを重ねるに従い増加する傾向があった。関与しない個体のスイッチ引き回数は実験期間を通じて低迷したままであった。Wilcoxon検定の結果、両者には有意差が見られた。一方、ペレット摂取個数については、スイッチ引きに関与した個体のペレット摂取量が概して多かったが、関与しない個体のペレット摂取量もスイッチ引きに関与していない割には多く、両者には統計的に有意差がある場合とない場合があった。セッション経過に伴うペレット摂取量の変化は、両者とも、スイッチ引きに関与する個体のスイッチ引き回数の変化に対し相関性が見られた。3個体のグループの場合も、ほぼ同様の結果が得られ、スイッチ引き行動に関与する個体と関与しない個体の出現、および関与しない個体の比較的多いペレット摂取量は同様であった。このようにキンギョの場合はスイッチ引き行動に関与する個体とそうでない個体が出現したが、関与する個体がスイッチの周りを占有し、かつ他の個体が摂餌できないほど抑圧してしまうことはなかった。 2)市販のPITタグリーダーをもちいて、スイッチ引き行動に関与する個体の識別を自動的に行う読み取り装置を開発し、性能試験を実施中である。
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