ブルーギルはキンギョとは異なり他個体への攻撃性が強く社会的階層構造(ヒエラルキー)の強い魚種である。H15年度はH14年度にキンギョに対して行った方法と同じ方法を用いて標識タグで個体識別したブルーギルの自発摂餌行動をデジタルビデオカメラによって観察撮影し、個体ごとの、1)スイッチ引き行動への関与の程度、2)ペレット摂取量、3)成長の程度について解析した。100L円形水槽内に標識したブルーギル2個体あるいは3個体を収容して自発摂餌により飼育した。実験は自発摂餌のスイッチを1日の一定の時刻に水槽に設置し、2時間後に取り外すという方法で行い、この間を1セッションとして自発摂餌行動を解析した。実験期間のセッション数は10〜20セッションとした。2個体からなるグループでは、スイッチ引きに関与する個体と関与しない個体が生じた。スイッチ引きに関与する個体のスイッチ引き回数は実験開始当初から高くセッション経過に伴う変化は無かった。一方、スイッチ引きに関与しない個体のスイッチ引き行動は実験期間を通じて全く無い状態に近かった。また、ペレット摂取個数についても、キンギョの場合とは異なり、スイッチ引きに関与する個体が主としてペレットを摂取していた。スイッチ引きに関与しない個体は全くペレットを摂取出来ていない状態であった。成長に関してもスイッチ引きに関与する個体の成長が勝っており、そうでない個体は痩せたり、場合によっては攻撃によるストレスで死に至る場合もあった。3個体のグループの場合も、2個体で飼育した場合と同様に、3個体の内1個体のみがスイッチ引きにおいてもペレット摂取においても優位となり、残りの2個体はスイッチ引きにもペレット摂取にも関与していなかった。このように、ブルーギルはキンギョと比較するとヒエラルキーは相当強く、優位な個体が劣位の個体を牽制・攻撃する行動をとった後に自発摂餌する場合も多々見られ、劣位の個体は水槽の隅でじっとしている場合が多かった。こういった牽制・攻撃行動の中で自発摂餌が行われていることが、キンギョの場合と異なる原因と考えられた。
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