| 研究概要 |
京都府舞鶴市の京都大学付属水産実験所に約100m^2のモデル実験区を構築した。事前の調査で1)この海浜が粘土と牡蛎殻からできており,場所により透水性にむらがあること,2)この海域ではもともと油分解細菌群集が多数存在することが明らかになっていたため,本研究では実験の度に比較的清浄な若狭湾に面する海水浴場(和田浜)の砂と入れ換えることにした。実際の油汚染でも社会的・経済的に問題になるのはこのような環境であろうと考えたからである。
実験は2002年7月〜9月と10月〜2003年2月の2回行った。市販の海砂をあらかじめ海水と混和しておいた中東産原油(人工漂着油)とともに撹拌し,汚染砂試料とした。これを実験区の観測井戸に,その時期の干潮浅と満潮浅のほぼ中間に位置するよう設置した。経時的に汚染砂を採取し,残存する油成分を解析するとともにケロシンを基質とした培地で油分解細菌数をMPN計数した。また,細菌計数用の培地にダルハム管を入れておき,油分解脱窒細菌の計数も試みた。一方,共同研究者である株式会社ネオスが新たに開発した栄養素供給型油処理剤Z18(特開2001-87754)を汚染砂に様々な濃度や形状で散布し,油分解を促進する効果を調べた。
その結果,処理剤添加区では14日目までの油分解細菌の増加が非添加区に較べて早く,また油の生分解も促進されたことがわかった。一方,この剤は油分解時に不足しがちな窒素成分を供給するものであり,基質である油成分が減少するに伴って蓄積してしまい,海域の富栄養化につながる可能性も示唆された。ただし,この油分解の過程で,脱窒活性を持つ油分解細菌も増加しており,この細菌を有効に維持することで余剰の窒素を系外に放出・除去することが期待される。現在,16S rDNA遺伝子や油分解遺伝子によりこの微生物群集の構造を解析するとともに,分離した油分解脱窒細菌の性状を解析している。
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