研究課題/領域番号 |
14560151
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大塚 攻 広島大学, 生物生産学部, 助教授 (00176934)
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研究分担者 |
長澤 和也 独立行政法人水産総合研究センター, 養殖研究所・日光支所, 支所長(研究職)
州崎 敏伸 神戸大学, 理学部, 助教授 (00187692)
堀口 健雄 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20212201)
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キーワード | カイアシ類 / アミ類 / 隔口類繊毛虫 / エロビオプシス / アミヤドリムシ / 宿主 / 寄生生物 / インターセックス |
研究概要 |
瀬戸内海およびその他の海域において、動物プランクトン、特にカイアシ類、アミ類、ヤムシ類の寄生生物の分類、生態の調査を実施した。 瀬戸内海において、隔口類繊毛虫Vampyrophrya pelagicaのphorontの浮遊性カイアシ類への付着状況を通年調査した。カイアシ類21種の成体および未成体の体表に本繊毛虫のphorontの付着が確認された。その宿主特異性は顕著で、Microsetella norveigicaには付着が通年全く確認できず、Oithona similisにもほとんど見られなかった。付着率の季節変動は顕著で、夏〜初冬にかけては最優占種Paracalanus parvus s.l.にはほぼ100%、その他のカイアシ類にも高頻度で付着が見られたが、晩冬〜春にかけては本種や小型種には付着が見られず、Calanus sinicusなどの大型種に限定されていた。こうした付著率、宿主の季節変動はカイアシ類の捕食者であるヤムシ類の密度との関連していることが示唆された。本繊毛虫の各ステージの細胞内微細構造を観察した結果、phoront内ですでに繊毛が完成しており、カイアシ類がヤムシ類などに捕食さるか、または傷付いた場合、いつでもphorontからハッチして、カイアシ類の組織を摂食し始めると考えられた。また、phorontおよびtrophont初期には特殊なラメラ構造が見られ、これが細胞膜あるいは食胞膜の前駆体と推定した。つまり、繊毛虫がカイアシ類の組織を多量に短時間に食べるため、細胞容積が急激に増大することへの適応と推測される。 瀬戸内海産アミ類Siriella okadaiの雌の育房内に寄生する等脚類アミヤドリムシの1種Prodajus s.p.(未記載種)が発見され、その雌雄成体、幼生の記載を行ない、寄生状況、生活史などの生態について調査した。育房内に本種の雌が発見されるのはほぼ6〜11月に限定されており、この間の最高寄生率は27%にも達した。一方、クリプトニスクス幼生は、アミ類の成体雌では育房内、その他の性、ステージでは主に腹部に吸盤状口器で付着しており、幼生の出現も6〜11月であった。幼生の寄生率は最高8%であった。アミヤドリムシ類の複数種が南西諸島でも確認された。 八丈島産アミ類Siriella japonica izuensisにはエロビオプシス類の1種が育房内面に寄生していた.その宿主の内、1個体は雌化した雄と同定され、本寄生生物がアミ類にインターセックスを引き起こす可能性を示唆した。 その他、南西諸島、スールー海にてオキアミ類に寄生する等脚類、南西諸島でクラゲノミ類に寄生するエロビオプシス類、瀬戸内海にてヤムシ類に寄生する渦鞭毛藻類などを確認した。この宿主としての動物プランクトンの調査の中で、カイアシ類の生物学に関わる新知見についても公表を行なった.
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