研究概要 |
昨年度はクロダイよりクロダイマイクロサテライト(以下MS)7マーカー座を単離し、その多型性を確認した。本年度は、MSを用いて、放流種苗の生産に関与した親魚の交配の実体、並びに放流種苗と親魚間における遺伝様式を知るため、MS7マーカー座を用いて放流種苗とその親魚間での親子鑑定を2年間実施した。さらに、親子鑑定に基づき、2001年に実際に放流された種苗と野生魚の識別をMSマーカーで試みた。 まず、広島市水産振興協会で2000年および2001年に種苗生産された放流種苗とその親51尾(雌29尾、雄22尾)の親子鑑定を行った。親魚は両年とも同一で、分析に供した放流種苗は2000年が71尾、2001年が110尾であった。解析の結果、親魚51尾と2000年および2001年の放流種苗のヘテロ接合体率には差は認められなかったが、放流種苗の平均対立遺伝子数は親魚に比べ2000年で16.5%,2001年で17.3%が減衰した。親子鑑別の結果、2000年の放雑種苗では69.7%,2001年の放流種苗では69.0%の親魚カップルが特定できた。また、生産に寄与していた親魚は,2000年では51.7%の雌と77.3%の雄,2001年では48.3%の雌と72.7%雄,両年を通じては69.0%の雌と90.9%の雄であった。 次に、2001年に広島市似島に放流された放流種苗の追跡調査をMS5マーカー座で行った。その結果、放流後2ヶ月で58.8%(199尾中117尾)の放流魚が確認できた。この結果は、従来行われてきた耳石蛍光標織や鰭カット標織と同様であることから、MSがクロダイ放流種苗の遺伝標織に有効であることが確認された。今後は、開発した遺伝標織を用い、2年から3年後の放流種苗を追跡し、それらの生殖機能を調査する予定である。
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