補体の生体防御機能の多くは、主要成分C3の活性化断片に俵存している。したがって、活性化されたC3の断片化を分子レベルで解明することが重要である。本研究は、コイC3の断片化を担うI因子の分子クローニング、およびI因子以外の補体制御因子の探索を行った。I因子のクローニングは、RT-PCRおよびコイ肝膵臓cDNAライブラリーのスクリーニングによって行った。2種のI因子アイソタイプ(FI-AとFI-B)が得られ、両者は有為な配列類似性を示したものの、ドメイン構造に違いが見られた。両アイソタイプの発現部位をRT-PCRによって調べたところ、正常なドメイン構造をもつFI-Aは卵巣で、新規ドメインがN-末端に挿入された異型であるFI-Bは肝膵臓で主に発現することが判明した。この結果から、補体の制御に主に関与するのは、FI-AよりもむしろFI-Bであることが示唆された。コイのFI-A配列を用いてフグゲノムデータベースをサーチしたところフグのFIホモログ遺伝子が見つかり、その配列解析から、硬骨魚類のFI遺伝子のエキソン/イントロン構造の一部が哺乳類の対応する遺伝子とは若干異なることが判明した。一方、タンパク質レベルでは、コイ血清によるウサギ赤血球の溶血反応を阻害する2種のコイ血清タンパク質が検出され、それらはいずれもC3の標的細胞への沈着を顕著に阻害した。現在、これら阻害タンパク質の精製とN末端アミノ酸配列分析が進行中である。
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