サンゴ礁魚類に特徴的に多い月齢同調性産卵現象の生理学的側面からの解明することを目的として、魚(ゴマアイゴ、Siganus guttatus)が月からの情報をどのように体内リズムに転換しているかについて主に研究を行った。いくつかある月が地球に及ぼす環境変化のうち、特に月光に焦点をあてて以下の研究を行った。 サンゴ礁魚類における月光感受の検討 ゴマアイゴの血中メラトニン量に日周変動が認められ、暗期に高く明期に低い値を示した。満月(明るい夜)と新月(比較暗の夜)時(0時)における同じ魚の血中メラトニン量を調べた結果、満月時における血中メラトニン量は新月時のそれに比べて低下していた。恒暗条件で飼育していた魚を新月・満月(0時)に暴露した時血中メラトニン量は急激に減少した。アイゴ類は月光を感じ取っていることが明らかとなった。 器官培養した松果体における月光感受能 ゴマアイゴの松果体を生体外培養した結果、松果体からのメラトニン分泌に明確な明暗変動がみられた。この結果から、ゴマアイゴの松果体に光受容能があることが判明した。培養した松果体を月光に暴露することにより培養液中へのメラトニン分泌量は減少した。また、昼間光から引き続き夜間光へ移行した松果体でのメラトニン分泌量は、実験暗条件に比べて低かった。以上の結果から、アイゴの松果体は夜の明るさを認識できる可能性があった。
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