研究概要 |
過去の調査を含めて本年度までに相模湾の100m以深の海域から18種類の軟骨魚類を採集した。うち全頭類のギンザメ類が2種、他の16種類はサメで、エイは漁獲されなかった。漁法は底刺網、底立延縄、釣りである。このうちもっとも多く漁獲されたのがフトツノザメで、合計299尾に達した。水深別の分布状況を見ると、沿岸域では漁獲水深は100-450mにほぼ限定され、春と夏は雌雄ともに水深100-200m、秋には300-400mでの分布密度が高いが、冬場には全く漁獲されなかった。胃内容物組成は、高位分類でみると、魚類の占める割合が高く、ついで頭足類、甲殻類と続いた。採集方法により、胃内容物組成に差がみられた。雌の生殖状況を調べたところ、最小成熟全長は954mm,50%成熟全長は954mm,100%成熟全長は1052mmなった。一腹あたりの大型卵巣卵数と胎児数はそれぞれ4-13の範囲で平均が7.8と3-13の範囲で平均が7.3であった。雄では未成熟個体はほとんど採集されず、正確さには欠くが、最小成熟全長は715mmで、最大全長は960mmであった。第2背鰭棘を用いて年齢と成長を求め、成熟全長を当てはめたところ、雄は約10歳、雌は13歳で成熟するものと推定された。これらの研究成果の一部は、日本水産学会年会および東京大学海洋研究所でのシンポジウムで口頭発表を行った。また、板鰓類研究会報でも公表済みである。 また、ギス底立延縄の試験操業で得られた漁獲データの解析と乗船調査から、フトツノザメによると推定されるギスとトウジンヘの食害の実態が解明され、日本水産学会年会で口頭発表するとともに、神奈川県総合水産研究所研究報告に公表した。比較対照のため、相模湾で水深50m前後の浅海で底刺網による軟骨魚類の採集を行い、多獲されるシビレエイの繁殖と食性の研究を行い、歯に性的二型が存在することを明らかにした。
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