研究概要 |
深海域から新たに2種類の軟骨魚類、ツマリツノザメSqualus brevirostrisとヤモリザメGaleus eastmaniを採集した結果、本研究で確認した相模湾産深海性軟骨魚類は20種となった。本年度は神奈川県水産総合研究所の江の島丸による軟骨魚類の採集が出来なかったので、漁船及び遊漁船からの標本採集を試みたが、当初め計画通りには標本が集まらなかった。そこで、本年度はフトツノザメの背鰭棘断面に表れる輪紋が年齢形質の手がかりとなるかの検討を行った。棘断面の輪紋は、薄切片作成後にマイヤーズヘマトキシリンで染色する方法がもっとも見やすいことが分かった。同一個体でみると、従来のエナメル質表面に表れる輪紋数よりは棘断面の輪紋数が少ないことも判明した。また、深海性サメ類の鯉や体表に見られる寄生虫を調べた結果、特にウミクワガタ類が多く採集された。常に2つの体長グループが出現したことから、少なくとも一定の大きさになるとウミクワガタ類は2回サメに寄生し、中間の大きさでは自由生活をすると推定された。さらに、子宮内に見られる単生虫類の寄生虫を調べた結果、新属新種であることが強く示唆された。食性については、本年度のフトツノザメ標本では空胃もしくは消化済みの胃内容物が多いことから、安定同位対比による食地位の解析を行ったところ、C=Nマップでみると雌雄差が見られること、また成長によりδN値が大きくなる傾向が見られた。また、ギンザメは他の深海性サメ類より高いδCとδN値をとり、本種の食地位が高いことが示唆された。 本年度はニュージーランドで開催された[Conservation and management of deepsea chondrichthyan fishes]の国際ワークショップで「Deepsea chondrichthyan fishes of Sagami Bay, central Japan」を発表し、さらに日本魚類学会年会で「相模湾産シビレエイの繁殖に関する若干の知見」を発表した。
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