研究課題
マベガイ外套膜レクチン(PPL-1)について、これまでにその一次構造を明らかにしPPL-1のアミノ酸配列が主にサケ科魚類卵に存在するレクチン(RBLs)と30〜40%の相同性を有すること、PPL-1はRBLs同様微生物凝集活性を有すること、PPL-1はマベガイ固体中の外套膜、生殖腺に発現していること、マベガイ外套膜にはPPL-1と相同性を持たない別のレクチン(PPL-2)が存在することなどが明らかになっている。さらに今年度は、この知見をもとに以下のことを検討した。1.PPL-1は常時マベガイ外套膜に発現しているが、生殖腺における発現の有無は季節によって差が認められた。すなわち、春〜夏にかけては生殖腺に発現が確認されるが、冬季には確認されなかった。2.Frontal affinity chromatographyの結果、PPL-1の特異的結合糖鎖はアスパラギン結合型(N型)のコア部分であることが明らかとなったが、PPL-2はこの糖鎖を有しており、PPL-1とPPL-2がマベガイ生体内で相互作用している可能性が示唆された。3.PPL-1は架橋実験の結果、その濃度に応じて単量体か、あるいは二量体で存在することがわかった。一方、PPL-1は塩濃度によっても存在形態が変化することが明らかとなった。NaCl濃度500mM存在下ではPPL-1は二量体であるが、0〜250mM存在下では主に単量体で存在することがゲルろ過クロマトグラフィー、動的光散乱、SDS-PAGEにより明らかとなった。4.PPL-1,PPL-2を単離した残液に強いレクチン活性が残っていたことからマベガイ外套膜中にはさらに別のレクチンが存在する可能性が示唆された。以上のことから、PPL-1は環境に応じて立体構造を変化させ、必要に応じて機能を発揮するものと推察される。また新たに発見されたPPL-2と相互作用を示したことから、単独で作用するのみでなく、相互作用により新しい機能を発揮している可能性も示唆された。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (2件)
Materials Transactions 45(04)
ページ: 999-1004
Boundary 20(in press)