本研究では、最も複雑なTG分子種を持つ魚油のTG分子種分析及びその定量を目的として実験を行っている。 昨年度までの研究の進展 TG分子種分析は通常、逆相系の液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析される。本研究ではこれまで使用されてきたODS(C18)カラムに代え、トリアコンタシル(C30)カラムを用い魚油TGの分析を行った。結果、分離が格段に上昇し、しかも、エタノール、アセトニトリルなどの205nm以下にしか吸収を持たない溶媒のみを使用してTG分子種の分離が可能であることを発見した。 一方これまで検出は、RI検出器(不安定)、光散乱検出器(定量性が低い)などが使用されてきた。これは、ODSカラムによるアルコール系溶媒での分離が悪く、アセトンなどの溶媒を使用していたため、UV検出器が使用出来なかったことによる。本研究の分析条件では、アルコールが使用できるため、UV検出器(210nm)を用いての分析が可能となった。さらに、HPLCへの注入量を変えて、注入量と各ピーク面積の相関を調べたところ、全てのピークで直線性を示すことを確認した。 今年度の実績(各種魚油TG分子種の検量線の作成) HPLC-UVにてメバチマグロ筋肉油中の各TG分子種を分取し、標準サンプルとした。また合成可能なTG分子種に関しては、固定化リパーゼを用い、合成にて標準サンプルを得た。 合計15種類の魚油由来TG分子種標準サンプルを用い、HPLC-UVにて検量線を作成した結果、すべてのTG分子種で1次式で表される検量線を得た。さらに検量線の傾きは分子種により異なり、パーティションナンバー(TGを構成するアシル基の総鎖長-2×TGに存在する二重結合の数)が大きくなるほどその傾きは小さくなることを発見した。 今後の予定 現在、そのほかのTG分子種に関しても同様に検量線を作成している最中である。さらに内部標準物質を用い、その検量線の傾きと、各TG分子種の検量線の傾きとの相関を明らかにし、内部標準物質を用いた魚油TG分子種の定量法へと発展させる予定である。
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