研究概要 |
フグの毒化に関わる膜タンパク質を解析するにあたり,本年度はまず,フグ毒テトロドトキシン(TTX)を含む試料とそうでない試料を確実に調製するためのin vitroによる培養モデルの構築を試みた。トラフグ,アイナメ,イシダイ.ウマヅラハギを試料魚とし,それぞれ肝臓を取出し.肝組織切片(φ10x2mm)を調製し.これをTTXを添加したMEM培地で培養(48時間,25℃)したところ,トラフグでは培養2時間後にTTX(3.9μg/g)が検出され,その後,TTX量は増加し48時間後には16.4μg/gに達した。一方,アイナメ,イシダイ.ウマヅラハギでは培養直後に2〜6μg/gのTTXが検出されたが,その後毒量は増加せず,48時間後でもTTX量は2〜4μg/gにとどまった。 次に,培地に添加する毒をサキシトキシンを主成分とする麻痺性貝毒にかえてin vitroで同様に培養したところ,トラフグ,アイナメ,イシダイでほぼ似た毒の蓄積パターンを示した。試験した3魚種の肝組織切片から,培養直後に麻痺性貝毒が検出されたが,その後毒量の顕著な増加はみられず,48時間後の毒量は2〜5μ g/gであった。 このように,魚類肝組織切片を用いるn vitro培養実験においてフグのTTXによる毒化を再現できることがわかり,魚種および毒の有無による条件を作り出すことが可能になった。現在,魚類肝臓からの膜タンパク費の抽出ならびに分析条件の検討を行っている。
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