1.今年度はイギリスにおける開発圧力の実態についての調査を行った。その際、北西部のマンチェスター、中部のバーミンガム、南東部のロンドンの周辺を対比的に調査した。また田園地域に位置する人口1〜2万人規模のマーケット・タウン周辺の状況、ほぼ全域をグリーン・ベルトに指定されているサリー州についても調査した。 2.イギリスの開発圧力の特徴の第1は、住宅地需要が旺盛であることである。即ち産業構造の変化を反映し、北部地域においては従来的な重化学工業が衰退し、南部とりわけロンドンを中心とする南東部での知識集約型産業の発展が著しく、従って南東部での住宅地需要が顕著に増大していた。政府はロンドン東部のテームズ・ゲートウェイ、そしてケンブリッジに連なる回廊、ミルトンキーンズからミッドランドに続こうという地域をgrowth areasと指定して、計画的な住宅地開発を進めようとしており、バブル的な住宅価格上昇もあって、住宅地需要はいっそう昂進している。第2に、自動車交通そして通信手段の利便性の向上などもあって住宅地需要は田園地域にも深く及んでいることが明らかとなった。第3に、商業地需要については日本のような拡散的傾向は抑制されている。イギリスにおいては都市あるいはタウンを一つの財産・ツールとして重視し、タウンとタウンあるいはタウンと田園地域の無原則的な融合を許さず、都市内交通手段の改善を含め都市の再開発を進めている結果と考えられた。 3.制度の側面では第1に、田園地域あるいはグリーン・ベルト地域への住宅地需要についてはなお自宅増築domestic extensionが中心で、引き続き厳格に抑制されていることが明らかとなった。第2に、growth areasなどを明確にし、一定の規範の下で(市街地の中心部を含め)ダイナミックな土地利用の転換・再開発を進行させ、開発促進的な制度運用をしていることも明らかとなった。
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